- 長文論述対策に使う参考書で悩んでいる
- 世界史論述練習帳について、詳しく知りたい
多くの難関大学で出題されるのが、長文論述問題。
自分の知識を関連づけて、300〜600字でまとめあげるのは至難の業です。

特に独学の場合、対策法がなかなか掴みづらい問題です。
そこで使えるのが「世界史論述練習帳」という問題集。
注意すべき点はあるものの、長文論述対策にかなり使える参考書であることは間違いありません。
そこで今回は、そんな世界史論述帳について
- 特徴
- 対象者
- 注意点
- 使い方
- 始めるタイミング
の5本立てで、“超”詳しく解説していきます!



東大受験を経験してきた身として、ところどころ率直な意見も書いてみました。
皆さんの参考になればとても嬉しいです。
- 日々学習に励む現役東大生。
- 受験生時代の世界史はセンター試験満点、2次試験は40点/60点。
- 学びについての情報を、とにかく学習者目線をモットーに発信しています!
特徴



まずは世界史論述帳の特徴から見ていきましょう。


世界史論述練習帳は、以上の5つが魅力の参考書です。



それぞれ説明していきますね。
特徴① 論述を体系的に学べる
世界史論述練習帳は、「過程」「変化」「比較」などの全7テーマに論述問題を分類し、それぞれについて順番に学んでいく構成になっています。
そのため、取り組んでいく中で論述問題のパターン分けを自然と身につけることができます。
もしかすると、
型にはめて解答作成するのは柔軟性が下がってしまいそう、、
と気後れする方もいるかもしれません。
しかし長文論述のパターンによって、書くべきポイントというのはある程度決まってきます。
あとは問題によって少しそれを変化させるだけで、かなり出題者の意図に沿った解答が作れるようになります。



パターン分けができていない場合、一から解答の形を作る必要があり、的外れな内容になってしまうリスクも高まります。
さらにある程度パターン分けの形を自分の中に持っておくことは、解答時間短縮という点でもとても有効です。



多くの世界史2次試験は、時間との勝負でもあります。
もちろんガチガチに凝り固まってしまうと初見の問題の対応力が下がってしまいますが、各パターンで押さえておくべきポイントを知っておくだけでもかなり書きやすさと得点が変わってきますので、長文論述対策においてパターン分けの習得は必須事項といえます。
特徴② 高得点のための思考力を養える
すべての長文論述問題で必要なものの、疎かになりがちなのが
「問題文の正しい理解」
このポイントの徹底です。



「そもそも出題者は何を聞いているのか?」「どんな解答を期待しているのか?」の認識がずれてしまっていると、なかなかいい点数は取ることができません。
この参考書では、まず前提として出題者の聞いていることをしっかりと確認し、そのうえで具体的な解答作成の方法へと移っていきます。
当たり前に感じるかもしれませんが、意外とこの部分が疎かになってしまっているものも多いため、この参考書の魅力として取り上げておきました。
特徴③ 出題者の視点が身につく
この参考書での問題解説の流れは以下のようになっています。
なかでも特殊なのは、STEP2の解答例添削です。
STEP1で構想メモの作り方を学び、問題の要点を身につけたうえで、穴のある受験生の解答例を添削していくことで、出題者の視点を養うことができます。



この参考書にしかない魅力的なトレーニング方法です。
特徴④ レベル別の構成
特徴①で、この参考書はテーマごとに順番に解いていくことができることを説明しました。
このテーマの順番、さらにテーマ内の問題の順番にも、実は魅力が隠されています。
より簡単なテーマから複雑なテーマへ、より易しい問題から難しい問題へと問題が並んでいるので、着実にレベルアップを実感できる構成になっています。



本書のいちばんはじめに、「順番に解きましょう。飛ばさないでください。」という但し書きがあるほど練られた構成になっています。
特徴⑤ 付録の「60文字問題集」が強力
この参考書は、おもに300文字〜600文字程度の長文記述対策をメインにしたものです。
しかし、長文記述は30〜60字の短文記述を正しく書くことができる知識を前提としたものであるため、点数アップのためには短文記述のトレーニングも必要となります。
そのため、この参考書には「基本60字」という短文記述問題集が付録としてついています。



300近い問題数があり、頻出テーマは完全に網羅されていると言っても過言ではありません。
この一冊で長文記述と、その前提スキルまで養うことができるのが大きな魅力です。
対象者


世界史論述練習帳の対象者は、以上のような受験生です。
付録の「基本60字」だけでもやる価値はあるため、志望する大学によっては本編の長文論述対策はやらないという選択肢もアリです。
ですが、やはりメインの対象者は
を目指す受験生だと思います。
ここでいう「複雑な長文論述問題」とは、出題者の意図を踏まえて、知識をどう組み合わせて解答欄に表現できるかを見る問題のことをを指しています。



たとえば、以下に挙げた京大の過去問はまさにそういった問題といえます。
宋代以降の中国において、さまざまな分野で指導的な役割を果たすようになるのは士大夫と呼ばれる社会層である。彼らはいかなる点で新しい存在であったのか。これについて、彼らを生み出すに至った新しい土地制度と、彼らが担うことになる新しい学術にも必ず言及し、これらをそれ以前のもの対比しつつ300字以内で述べよ。(京都大学、2009年)
こういった、単なる一対一対応の知識では解答が難しい問題に取り組む必要がある方にとっては、世界史論述練習帳はかなり有益な参考書であることは間違いありません。
注意点


ここまで、世界史論述練習帳の5つの魅力と対象者をご紹介してきました。
しかし、注意すべき点があることもまた事実。



実は、かなり好みが分かれている参考書です。
ここでは、この参考書を使ううえでの注意点を2つ、ご紹介します。
注意点① 独特な解答用紙の使い方
この本の中で、解答用紙の使い方についてかなり独特な指導がなされています。
例としては以下のようなもの。
・フキダシを使って、あとから内容を挿入する
・前後で読みかえて欲しい部分にマークをつける
この参考書以外では聞いたことがなかった、珍しい指導内容です。
個人的には解答用紙に文字以外の要素を書くことは、採点者の心象が悪くなり点数が下がってしまうことにつながるのでは?と思うので賛同はしかねる内容です。



もし昔はOKだったとしても、出版時の2009年から現在までに採点基準が変わっているリスクもあるため、あまりおすすめはしません。
注意点② ちらほら不自然な日本語がある
特に付録の「基本60字」で顕著なのですが、著者が解答用紙に詰め込みたい情報が多すぎて、主語や述語が一致していなかったりとちぐはぐな部分が散見されます。
この参考書の16ページにて、筆者は以下のように述べています。
ときには主語・述語のそろっていない文章でもいいのです。たとえば、「航海法とはなにか、その目的と結果を説明せよ」と問われて、「国内産業の保護と貿易の振興のため。中継貿易のオランダに打撃を与え、3次の英蘭戦争がおき、勝ったイギリスが海上覇権を握った」と答えます。答えだけを読んでも、なんのことか分かりません。いくつか主語が抜けています。しかし問題を見てから読めば、ちゃんと分かる文章になっています。
中谷臣、「世界史論述練習帳new」、16ページ
しかし、採点者に内容の判断を委ねる解答は、あまり良いものとは思えません。



文章の体裁が整わないほどギリギリな文字数で出題してくることは、かなり考えづらいです。
受験生と採点者を繋ぐ唯一のコミュニケーション手段が解答用紙であるため、その内容は読みやすさにも細心の注意を払ったものであるべきと個人的には思います。
使い方
前の見出しで書いたように、この参考書にはかなり賛否が分かれる内容も記載されています。
しかし、このような注意点を考慮しても魅力的な参考書であることは間違いありません。
ここでは、この参考書のおすすめな使い方を紹介していきます。





4ポイント、それぞれ順に説明していきますね。
おすすめな使い方① 「思考力を養うための参考書」として取り組む
注意点の部分でも述べたとおり、この参考書に書かれている解答用紙の使い方・表現方法はかなり独特であり、本番で減点のリスクがあります。
しかし、特徴で書いたように、この参考書には他にはない魅力が数多くあることもまた事実です。
そのため、著者の書いた解答例に疑問が残る場合は自分なりにデフォルメしつつ、あくまでも「論述で必要な思考力を養う参考書」として取り組むことをおすすめします。



著者のやり方に100%従う必要はありません。自分が採点者だったらイヤだな、と思う部分については、どんどん自分なりにカスタマイズしていきましょう。
おすすめな使い方② 納得いく「構想メモ」を作れたら、解説を確認
長文論述問題を解くなかで、実際に毎回300〜600字の解答を作成する必要はありません。
著者も本書の冒頭で、
文章化は上達を保証しません。
と述べています。



この部分はかなり賛同します。私も受験生時代、直前期以外は実際に解答文を作成することはありませんでした。
解答作成にかける時間が減らせると、その分多くの問題に取り組めますし、他の科目に時間を割くこともできます。
各問の到達目標としては以下のようなもので全く問題ありません。
解答作成の土台となる「構想メモ」を、教科書や資料集を参照しつつ納得のいく内容になるまで作り上げる
これができたら、解説を確認して次の問題に取り組んでいきましょう。
おすすめな使い方③ 1〜2周したら、過去問へ移行してOK
この参考書で吸収するべき内容は、ざっくり以下の2ポイントに集約できます。
- 長文問題のパターン分けと、それぞれについての答え方
- 出題者の意図に的確に応えるためのコツ・ポイント
細かい表現を覚えることが必要なわけではないので、1〜2周すれば十分だと思います。
要点が掴めたら過去問演習へ移行し、アウトプットを通して学習内容を定着させていきましょう。
おすすめな使い方④ 過去問へ移行後も見直して、パターンやポイントをチェック
すぐ上で書いたように、過去問演習ではこの参考書の学習内容をアウトプットしていくことになります。
どうしても忘れてしまう部分や、もう一度理解を深めたい部分もあると思うので、過去問演習の際には常にそばに置いておき適宜確認できるようにしておくことをおすすめします。




世界史論述練習帳は、以上のようなタイミングで始めることをおすすめします。
共通テスト8割が安定してきたころには、世界史の流れや大まかな要点を掴めていると思います。
この段階よりも前に世界史論述練習帳に取り組んでも、本書の目的である
- 長文問題のパターン分けと、それぞれについての答え方
- 出題者の意図に的確に応えるためのコツ・ポイント
以上の2点の学習に集中できないため、学習効率が下がってしまいます。
まずは単語のインプットに取り組み、過去問演習を行う前にこの参考書を挟むのがおすすめです。


まとめ
世界史論述練習帳は、ひとクセあるものの、長文論述対策にかなり使える参考書です。
この本を使い、論述問題で活きる思考力を養うことができれば、世界史が得点源になることは間違いありません。
この記事の内容を踏まえつつ、ぜひ有効活用してみてくださいね。

